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タイオガ・ウェイ21番地での30年間の思い出

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マーブルヘッドのタイオガ・ウェイ21番地で私の研究所を立ち上げてから30年以上が経ちました。その間、抗炎症栄養学の歴史に豊富な内容をもたらした私のテクノロジーが数多くここで生まれました。
最初の会社はBioSynという名前で、そこで初の高プロテイン栄養バーを作りました。(そのバーは当然のことながら、「BioSyn栄養バー」と名づけられました。)弟のダグと一緒に、トライアスロン選手向けに考案した最初の販売キャンペーンが懐かしく思い出されます。バーの写真の横には「Just Eat It」というシンプルなキャッチフレーズが書かれていました。実に賢いです。私達は、オメガ3系脂肪酸とガンマリノレン酸(GLA)から成るアイコシリーズも販売しました。この2つの商品は1992年にスタンフォード大学競泳チームで使用され、バルセロナ五輪における8つの金メダル獲得の鍵となりました。この場所はプロのトライアスロン選手達とのミーティングの場所でもあり、『ザ・ゾーン』が出版される何年も前、彼らのパフォーマンスを高めるためにゾーンダイエットが果たす役割についてここで話し合っていました。
私の研究所がここに建ったことで、2人の幼い娘達は最高の遊び場を手に入れました。というのも、有毒ガスを扱うための実験室が空いていたので、彼女達はそこを自分達のプレイハウスとして使っていたからです。もちろん、私がその部屋にあらゆる種類の有毒化学物質を運び込み始めてからは、もはや遊び場ではなくなりました。
娘達のプレイハウスを奪った化学物質は、癌治療のための静脈内薬物送達システムに役立つ様々な種類の界面活性剤を作るために使われました。ですから当然、タイオガ・ウェイ21番地にBioSynと共に存在した私のもう一つの会社はSurfactant Technologies (界面活性剤テクノロジーの意味)と名づけられました。
1995年に『ザ・ゾーン』が出版されるまで、私達のビジネスに必要なスタッフはたった3人(母、弟、そして私)でした。弟と私は午前中に注文を取り、午後には小さな倉庫に移動して注文を処理していました。在庫管理はいたって簡単でした。『ザ・ゾーン』の出版以降、全てが変わりました。この本の出版で私達は人々に広く知られるようになり、売り上げが伸び、従業員も増え、商品数も増えました。しかし幸運なことに、私の実験室 (マニアックな科学者専用の小部屋) は、ビジネスの拡大に伴う混乱や騒音の中でも知性的な足場を提供し続けてくれました。
そして、私達は新天地であるコーポレイト・プレイス200番地に移転しました。この住所は今までよりずっとプロフェッショナルな響きですが(「コーポレイト」は会社の意味)、以前と変わらないものが一つあります。私専用の実験室です。私の実験室は以前より大きくなり、窓もあります。これが私にとっての進歩です。
私達の新しい住所は以下の通りです。Zone Labs, Inc. 200 Corporate Place Peabody, MA 01960 

  • 2015年11月09日(月)18時48分

フィッシュオイルと心臓疾患:その真実 パート2

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by Dr. Barry Sears
7月8日にワシントンポスト紙は「フィッシュオイルの錠剤:12億ドル規模の業界構築、今のところ、実のないうたい文句の上に」(1)という題の記事を掲載しました。私はこの記事と似たような記事を3月8日のニューヨークタイムズ紙でも読みました(2)。実際に、ニューヨークタイムズ紙の記事に対抗する記事をブログに掲載しました(先月号に掲載の「フィッシュオイルと心臓疾患:その真実」)。ワシントンポスト紙のライターは明らかにニューヨークタイムズ紙の記事を読んでおらず、言うまでもなく私のブログも読んでいないようなので、ワシントンポスト紙のこの記事に対しても新しいブログ記事を書きましょう。
心臓疾患治療にフィッシュオイルを使用することの利点は、フィッシュオイルが持つ、炎症を変化させる力から来ています。心血管系疾患の優秀な専門家は全員、心臓疾患において炎症は強力な推進力であることに同意します。ですから、炎症が減少することは恐らく良い事でしょう。これが、心臓専門医の誰もが2度目の心臓発作を防ぐために(これを二次予防と呼びます)アスピリンを(コレステロールを下げる効果は無いにもかかわらず)薦める理由です。残念なことに、そのようにアスピリンを薦める彼らの炎症に関する知識は幾分原始的です。
炎症には2つの明確な過程があります。最初の過程は炎症の起動(イニシエーション)過程で、それに続いて起こるのは炎症の収束(レゾリューション)過程です(3)。炎症システムを最高の効率で作動させるためには、この2つの過程のバランスが取れている必要があります。別の言葉で言えば、健康的な生活を送るためには、炎症反応のスイッチを入れたり切ったりできる必要があります。アスピリンやスタチン(スタチンにも抗炎症効果があります。)などの抗炎症薬は、炎症の起動(イニシエーション)の速度を落とします。(ちょっと待ってください。アスピリンもスタチンも心臓疾患治療に使われていませんか?)残念なことに、それらは炎症の収束(レゾリューション)過程をも阻害してしまいます。つまり、最初に起こった炎症反応が止まることなく続き、体に損傷を与え続けるものの、程度としては低いレベルで炎症反応が続くということです。抗炎症薬(特に非ステロイド系抗炎症薬)が副作用をもたらす理由はこれです。実際に市販の抗炎症薬で心臓発作や脳卒中を起こすリスクが増えてきたため、FDA(米国食品医薬品局)は市販の抗炎症薬に従来より厳格な表示をするよう発表したばかりです。
薬が薬であると分類されている理由は、有害な副作用があるからです。 更に、薬が実際に効果をもたらすのは、非常に狭い範囲の摂取量においてのみです。プラセボ程度の量の薬を摂取すれば、プラセボ効果を得られるでしょう。 同じ薬を毒性が出る量摂取すれば、毒性作用が出るでしょう。全ての薬には、いくらかの治療効果が出る摂取量の範囲があり、私達はその時もたらされる副作用が許容範囲内であることを願うのみです。
JAMA Internal Medicineから引用されているメタ分析研究は、24の研究のうち22の研究においてフィッシュオイルの効果が実証されなかった(しかし毒性も実証されなかった)ことを示しています(4)。その理由は、実質、このメタ分析に使われた(私がこの後で採り上げる1つを除く)全ての研究において、オメガ3系脂肪酸をプラセボ程度の量しか使用していなかったためです。結果として、その量は炎症の起動(イニシエーション)を減少させるのに十分な量でなかったと同時に、炎症の収束(レゾリューション)を促進するにも少なすぎたのです。
では、フィッシュオイルの治療効果が出る量とはどれ位でしょうか?最低量は、炎症性サイトカインの産出を減少させるレベルまでAA/EPA比を減らすのに必要な量だろうと私は思います。炎症性サイトカインの産出を減らすレベルのAA/EPA 比は、3未満です。
このことを最初に実証した研究はハーバード大学医学部の研究者達によって25年程前に行われ、New England Journal of Medicineという、さほど有名でない雑誌において発表されました (5)。この研究では炎症性サイトカイン、特に、細胞に炎症が起きた時に細胞から放出される腫瘍壊死因子(TNF)が計測されました。研究開始時の被験者達のAA/EPA比の平均は21でした。そして1日あたり5gのオメガ3脂肪酸を摂取し続けて10週間後、彼らのAA/EPA比の平均は2.4に下がっていました。更に、AA/EPA比がそのように低下したことに伴いTNFのレベルが有意に低下していました。これまでで最も売れた薬トップ10のうち3つは、関節リウマチ治療のためのTNFに対する抗体注射(Humara、Enbrel、Remicadeの3つ)であること、そしてこれらの薬によるTNFレベルの低下は、このハーバードの研究で25年前に実証されたのとほぼ同程度の低下であることを覚えておいて下さい。 2012年における関節リウマチ治療のためのこれら注射薬の売上高は約250億ドルでした。ですから、オメガ3系脂肪酸を最低でも1日5g摂っていない限り、心血管系疾患における炎症の起動(イニシエーション)を減らすためにはプラセボ程度の量しか摂っていないことになります。
しかし、炎症の起動(イニシエーション)を減らすことは全体像の一部にすぎません。大量のフィッシュオイルがもたらす、より魅力的な効果は、炎症の収束(レゾリューション)を推進する力です。これはレゾルビンと呼ばれる珍しい種類のホルモンを産出することによってなされます。レゾルビンは主にオメガ3系脂肪酸から作られますが、血液中に適度な濃度のオメガ3系脂肪酸が存在する場合にのみ作られます。レゾルビンの合成を増加させるのに十分な濃度のオメガ3系脂肪酸が血液中に存在するかについて、再びAA/EPA比が判断基準になります。AA/EPA比を1.5まで下げることができれば、レゾルビンの合成量が増加します。しかし、AA/EPA比をこのレベルまで下げるには、5gよりも多くのフィッシュオイルを摂取する必要があります。
更に、AA/EPA比がここまで下がると、ほぼ奇跡のようなことが起こり始めます。これはfat-1マウスと呼ばれる動物モデルの研究から分かっています。この動物モデルは、オメガ6系脂肪酸をオメガ3系脂肪酸に変換し、AA/EPA比がおよそ1になるよう遺伝子操作されています。 このように遺伝子操作された動物は、糖尿病、心臓疾患、アルツハイマー病などの炎症に関連する慢性疾患に非常にかかりにくいようです(6-8)。これと同じ効果を得るために遺伝子移植を受ける必要はありません。 十分な量のフィッシュオイルを摂ればAA/EPA比をそのレベルまで下げることができるからです。
フィッシュオイルを攻撃するこの記事において見落とされているもう一つの事実は、FDAに認可された、心血管系疾患(中性脂肪レベル増加)治療のためのオメガ3系脂肪酸処方薬があるということです。そしてその薬の売上高は、健康食品店で販売されているフィッシュオイル製品の売上高とされる12億ドルよりも遥かに大きな金額です。その処方薬は医師の間では良く知られていると思います。恐らくワシントンポスト紙の誰かがFDAに、あなた方は偽の薬に認可を与えたのですよ、と教えなければならないでしょう。しかし、1日5gのオメガ3系脂肪酸をこの薬で摂るためには、1日約6カプセル飲む必要があります。 AA/EPA比を更に下げ炎症の収束(レゾリューション)を促進するためには、更に多くの量が必要です(9)。それができるFDAに認可された薬が一つありますが、保険が適用される可能性はゼロに等しいでしょう。
fat-1マウスの研究以外に、心血管系疾患においてAA/EPA比を下げることの重要性を示し、特に心臓発作による死亡率を下げている臨床データは存在するでしょうか。 私が前回掲載したデータの一部を使わせてください(10)。
 慢性心疾患に関連する指標 日本人 アメリカ人
 総コレステロール値 (mg/dl)218213
 LDLコレステロール値 (mg/dl)132135
 喫煙者の割合49%8%
 AA/EPA比2.611
 慢性心疾患による死亡率 (10万人あたりの人数)46.2160

心臓疾患治療のためのスタチンとアスピリン(両方とも抗炎症薬)は、2004年までに日米両国でかなり広く使用されるようになっていたことを頭に入れておいてください。それでもなぜか日本人の慢性心疾患による死亡率は、米国人に比べてかなり少ないです。このことは、コレステロール値の差よりもAA/EPA比の差との関連性がずっと深いように思われます(喫煙により心疾患死亡率が下がるという仮定を皆様がしない限り)。
もしかすると、単に日本人が心臓疾患に対して遺伝的に守られているだけかも知れません。この考えは、心血管系疾患に関する至上最大の臨床研究、JELIS研究により却下されました(11)。JAMA Internal Medicineに掲載された記事によると、JELIS研究は、フィッシュオイルの効果が示された心血管系疾患に関する研究の1つです(4)。では、その記事に出て来た他の研究と違い、何故この非常に大規模な研究は成功したのでしょうか。この研究は18,000名の日本人を対象としており、全員がスタチンを服用していました。要するに、ここではスタチンがプラセボでした。被験者の半数は毎日大量のEPAを摂取し、残りの半数は同量のオリーブオイルを摂取しました。両グループの開始時におけるAA/EPA比の平均は1.6でした。3年半が経った後、スタチンとEPAを摂っていたグループのAA/EPA比は0.8まで下がり、心血管系イベント発症率はもう一方のグループと比較して20%低い数値でした。スタチンとオリーブオイルを摂っていたグループのAA/EPA比は1.6に留まっていました。至上最大規模の心血管系疾患に関する研究に基づき、そして「科学的根拠に基づく医療」の時代において、もし医師がスタチンと共にオメガ3系脂肪酸を処方しなかったとしたら、それは良い医療とは言えないでしょう。恐らく、オメガ3系脂肪酸処方薬の売上高がこんなにも大きい理由はこれでしょう。
加えて少しの宿題としてPub Med (米国国立医学図書館が提供する無料の医学文献データベース)を検索してみたところ、AA/EPA比の低下は一貫して心血管の状態を改善することを実証する最近の研究が沢山ありました(12-16)。または、彼らは単に私の著書『The OmegaRx Zone(オメガRx・ゾーン)』を読めば良かったでしょう。2002年に出版されたこの本は、米国におけるフィッシュオイル販売数の飛躍的増加をもたらしました(17)。しかし、AA/EPA比を下げる唯一の方法は(特にアメリカ人にとっては)オメガ3系脂肪酸の大量摂取で、(JELIS研究以外の)引用されたどの研究における使用量よりもずっと多くの量が必要です。
結論を言えば、AA/EPA比を治療ゾーン内(1から3の間)にコントロールできない限り、オメガ3系脂肪酸の心臓血管調整効果は決して見られず、その理由はオメガ3系脂肪酸をプラセボ程度の量しか使用していないからです。開始時のAA/EPA比が比較的低ければ、高い人に比べてそれを治療ゾーンまで引き下げるためにそれほど多くのオメガ3系脂肪酸を必要としません。アメリカ人におけるAA/EPA 比の平均は約18 (18)なので、これを心臓血管調整効果が現れ始める2.5まで引き下げるには大量のフィッシュオイルを必要とします。
プラセボ程度の量のフィッシュオイルを摂れば、プラセボ効果が期待できるでしょう。心臓疾患が依然としてアメリカ人の死因のナンバーワンであることを考えると、心臓疾患治療においてAA/EPA比が果たす役割に関する研究やJELIS研究を根拠とする「科学的根拠に基づく医療」とは、プラセボ程度の量を用いてプラセボ程度の効果をもたらした不備のある研究を基に一般大衆向けの記事を書くことではなく、治療効果の出る量のフィッシュオイル摂取をアメリカ人に薦め、心疾患死亡率を日本人と同程度の数値に近づけることではないでしょうか。
<参考文献>
1.Whoriskey P. “Fish oil pills: A $1.2 billion industry built, so far, on empty promises. Washington Post. July 8, 2015
2.O’Connor A. “Fish oil claims not supported by research.” New York Times. March 30, 2015
3.Serhan CN. “Pro-resolving lipid mediators are leads for resolution physiology.” Nature 510:92-101 (2014)
4.Grey A and Bolland M. “Clinical trial evidence and use of fish oil supplements.” JAMA Internal Medicine 174:460-462 (2014)
5.Endres S et al. “The effect of dietary supplementation with n-3 polyunsaturated acids on synthesis of interleukin-1 and tumor necrosis factor by mononuclear cells.” New Engl J Med 320:265-271 (1989)
6.Bellenger J et al. “High pancreatic n-3 fatty acid prevent STZ-induced diabetes in fat -1 mice.” Diabetes 60:1090-1099 (2011)
7.Wan JB et al. “Endogenously decreasing tissue n-6/n-3 fatty acid ratio reduces atherosclerotic lesions in apolipoprotein E-deficient mice by inhibiting systemic and vascular inflammation.” Arterioscler Thromb Vasc Biol 30:2487-2494 (2010)
8.Lebbadi M et al. “Endogenous conversion of omega-6 into omega-3 fatty acids improves neuropathology in an animal model of Alzheimer’s disease.” J Alzheimer’s Dis 27:853-869 (2011)
9.Yee LD et al. “Omega-3 fatty acid supplements in women at high risk of breast cancer have dose-dependent effects on breast adipose tissue fatty acid composition.” Am J Clin Nutr 91:1185-1194 (2010)
10.Sekikawa A et al. “Serum levels of marine-derived n-3 fatty acids in Icelanders, Japanese, Koreans, and Americans.” Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids 87:11-16 (2012)
11.Yokoyama M et al. “Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomized open-label, blinded endpoint analysis.” Lancet 369:1090-1098 (2007)
12.Hasegawa T et al. “Serum n-3 to n-6 polyunsaturated fatty acids ratio correlates with coronary plaque vulnerability: an optical coherence tomography study. Heart Vessels 29:596-602 (2014)
13.Domei T et al. “Ratio of serum n-3 to n-6 polyunsaturated fatty acids and the incidence of major adverse cardiac events in patients undergoing percutaneous coronary intervention.” Circ J 76:423-429 (2012)
14.Hayakawa S et al. “Association of plasma n-3 to n-6 polyunsaturated fatty acid ratio with complexity of coronary artery lesion.” Intern Med 51:1009-1014 (2012)
15.Ninomiya T et al. “Association between ratio of serum eicosapentaenoic acid to arachidonic acid and risk of cardiovascular disease: the Hisayama Study.” Atherosclerosis 231:261-267 (2013)
16.Fontani G et al. “Blood profiles, body fat and mood state in healthy subjects on different diets supplemented with Omega-3 polyunsaturated fatty acids.” Eur J Clin Invest 35:499-507 (2005)
17.Sears B. “The OmegaRx Zone”. Regan Books. New York, NY (2002)
18.Harris WS et al. “Erythrocyte omega-3 fatty acids increase and linoleic acid decreases with age: observations from 160,000 patients.” Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids 88:257-63 (2013)

  • 2015年10月01日(木)19時19分

フィッシュオイルと心臓疾患: その真実

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10年以上前に私は『ザ・オメガRxゾーン』を書き、その副題を 「フィッシュオイル大量摂取の奇跡」としました。しかしニューヨークタイムズ紙に最近掲載された「フィッシュオイルの宣伝文句は研究に裏付けられていない」という記事は、私の著書と正反対の結論を出しています(1)。もちろん、私達のどちらか一方が正しく、もう一方が間違っているわけです。
オメガ3脂肪酸は、治療効果の出る量を摂取した場合に限り治療効果を発揮し得ます。これはどの処方薬にも言えることです。オメガ3脂肪酸であれ処方薬であれ、プラセボ程度の量しか摂取しなければ、プラセボ効果しか得ることができません。しかし、オメガ3脂肪酸はどの薬よりもはるかに複雑です。というのもオメガ3脂肪酸は、分子の構成要素として働いたり、炎症性遺伝子の発現を変えるために炎症をコントロールする強力なホルモンとして働いたり、その摂取量により様々な働きを見せるためです。
心血管疾患の著名な学術研究者であれば誰でも、心疾患は炎症性疾患であることを知っています。しかし、炎症のどの部分が実際に心疾患を引き起こすのでしょうか。これはやや複雑な問題です。炎症には明確に区別される2つの過程があるからです。最初の過程は炎症のイニシエーション・フェーズ(開始過程)で、二番目の過程はレゾリューション・フェーズ(収束過程)です。この2つの過程は共に能動的な過程であり、それぞれが独自に機能しています。2つの過程の均衡が崩れると、結果として、痛みを感じないほど低レベルの慢性炎症が続くようになります。私は、この2つの過程の不均衡状態を細胞の炎症と呼んでいます。アテローム硬化性病変の増大とその破裂は心疾患による死につながりますが、これらの原因は細胞の炎症です。
少量(1日1~2g)のオメガ3脂肪酸は、炎症反応の開始に対する弱い阻害剤として働きます。炎症反応の開始に対し実質的に影響を与えるためには、それよりはるかに多い量(1日5g以上)が必要です。これは25年前に『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』において発表されています(2)。心疾患に関する長期的研究で1日5g以上のオメガ3脂肪酸を使用したものはほとんど無いと言ってよいでしょう。しかしオメガ3脂肪酸の真価は、炎症のレゾリューション・フェーズ(収束過程)を促進する力にあります。(3)。そのためには非常に大量のオメガ3脂肪酸(1日8~10g)が必要です。このように大量にオメガ3脂肪酸を摂取した場合にのみ、炎症を収束に導く強力なホルモン(レゾルビン等)を治療レベルで産出し、炎症を収束させることができます。更に、オメガ3脂肪酸の摂取量だけではなく、オメガ6脂肪酸であるAA(アラキドン酸)とオメガ3脂肪酸であるEPA(エイコサペンタエン酸)の比率もまた重要です。この比率が炎症の開始と収束のバランスを決定するからです。このAA(アラキドン酸)/EPA(エイコサペンタエン酸)比を3未満、理想的には1.5程度にしない限り、慢性的な細胞の炎症を排除するのに十分なレゾルビンの産出がなされません。要するに、皆様のAA/EPA比が高ければ高いほど、皆様の体はよりひどい炎症状態にあるということです。この段落の内容が、オメガ3脂肪酸を用いた心疾患研究の多くが曖昧な結果しか出せなかった理由の説明となります。
二次予防(例えば二回目の心臓発作を防ぐ等の)効果を持つ唯一の抗炎症薬はアスピリンです(4)。なぜ他の抗炎症薬ではなくアスピリンだけなのでしょうか。少量のアスピリンは、レゾルビンの化学的構造を変化させ血中寿命を延ばす酵素に化学変化を引き起こし、その結果として炎症の収束を促進することが分かりました(5)。しかし、より多い量のアスピリンを摂取すると、レゾルビンの働きを高める効果は全て失われてしまいます。実際に、より多い量では他の抗炎症薬と同様にアスピリンもまた炎症の収束を阻害する薬になってしまいます。つまりこれらの抗炎症薬は、炎症の収束プロセスを開始するのに必要なステップを阻害します。抗炎症薬が重大な副作用、特に心臓発作のリスク上昇をもたらす理由はここにあります(6)。
ニューヨークタイムズ紙による小規模の研究は、その記事を公表する以前には有用だったことでしょう。しかし本来引用されるべき研究は、日本人男性とアメリカ人男性を比較し、その心疾患による死亡率の大きな差を説明しようと試みた1つの国際的研究だと思います(7)。その研究データの要約が以下に示されています。
慢性心疾患パラメーター日本人アメリカ人
総コレステロール値 (mg/dl)218213
LDLコレステロール値 (mg/dl)132135
喫煙者49%8%
AA/EPA比2.611
慢性心疾患による死亡 (10万名あたり)46.2160
アメリカ人の年齢調節慢性心疾患死亡率が日本人の3倍以上である原因が、2国間のコレステロール値(総コレステロール値またはLDLコレステロール値)の差であるとは考えにくいです。同様に、アメリカ人と比較して日本人男性の喫煙率が6倍以上であることもまた、日本人の心疾患死亡率の低さの原因とは考えにくいです。しかし、日本人の心疾患死亡率の低さと日本人のAA/EPA比の低さは非常に関連性があるように思われます。
コレステロール値が高い日本人においてはどうでしょうか。この疑問の答えは18,000名以上を対象としたJELIS研究において出されました(8)。この研究は史上最大の心血管介入試験の一つで、通常の臨床試験とは少々異なるものでした。というのも、対象となる18,000名全員がスタチンを服用していたからです。要するに、この研究ではスタチンがプラセボで、有効成分を含む薬はEPAのサプリメントでした。対象となる心疾患患者の半数には1日1.6gのEPAがサプリメントとして与えられ、もう半数には同量のオリーブオイルがサプリメントとして与えられました。2つのグループにおける開始時のAA/EPA比は1.6でした。 つまり平均的なアメリカ人に比べ、彼らの細胞の炎症のレベルは非常に低いものでした。3年以上が経過した後、EPA を与えられていたグループのAA/EPA比は0.8まで下がり、オリーブオイルを与えられていたグループのAA/EPA比は1.6に止まりました。EPAを摂っていたグループでは、AA/EPA比が50%低下したことで、オリーブオイルを摂っていたグループと比較して心血管系イベントの低下率は20%大きい数字でした。これは、適量のオメガ3脂肪酸を摂ること、そして同時にAA/EPA比を下げること、この2つを抜きにしてスタチンを処方することは、お粗末な医学の実践であることを示唆しています。
もしかすると日本人は、遺伝的にアメリカ人と非常に違うのかも知れません。では、アメリカ人の血中オメガ3脂肪酸と慢性心疾患発生率に関するハーバード大学の見解を見てみましょう(9)。ハーバードが行ったこの研究におけるアメリカ人の平均的AA/EPA比は約18で、これは日本人の平均値(1.5から3の間)よりはるかに高い値ですが、アメリカ人を対象とした複数の長期的研究の数値と一致していました(10)。この研究では、血中EPA濃度が上位4分の1以内(総脂肪酸のわずか1.6%)の人々における心疾患発生率は、血中EPA濃度が下位4分の1以内(総脂肪酸の0.6%)の人々と比較すると51%低い数値でした。アメリカ人のEPAレベルを日本人並(総脂肪酸の2.5%)に引き上げるためには、非常に多くの魚を食べるか、またはフィッシュオイルのサプリメントを大量に摂取する必要があります。このことは乳癌リスクの高い女性を対象としたある研究において実証されました(11)。この研究において、対象者は1日に5~7.5gのEPA・DHAをサプリメントとして毎日摂取することによってはじめて、日本人の心血管疾患患者と同程度のAA/EPA比に到達することができました。
では、なぜ最近の研究よりも以前のフィッシュオイル補給研究の方がフィッシュオイル補給の効果を強く示唆し得たのでしょうか。考えられる理由の一つに、以前の研究が行われた頃にはスタチンが現在ほど広く使用されていなかったことがあります。スタチンはアラキドン酸の産出を増加させる唯一の薬であり、従ってAA/EPA比を上昇させます(12)。すると慢性心疾患のリスクが上昇します。従って、スタチンの使用が増えたことでオメガ3脂肪酸補給の効果が全て除去された可能性があります。もう一つ考えられる理由は、ほとんどのフィッシュオイルサプリメントに大量のPCBが含まれており(特に1日2カプセル以上摂取した場合)、それが心疾患発生率を上昇させ、その結果オメガ3脂肪酸補給の効果を全て消し去ってしまったということです(13)。最後にもう一つ考えられる理由は、世界的なオメガ6脂肪酸の摂取量増加が、体内で自然に産出されるオメガ3脂肪酸の量を減少させることです(14)。すると、レゾルビンを十分に産出するために必要なオメガ3脂肪酸レベルに到達することがより難しくなります。これは、心血管疾患患者にオメガ6脂肪酸だけを補給しオメガ3脂肪酸を補給せずにいると心疾患発生率が上昇したという事実の説明にもなります(15)。
ニューヨークタイムズ紙は単にプレスリリースを書き換えるのではなく、その前にフィッシュオイル補給と心疾患についてもう少しきちんと調査した上で報道するだろうと私は思っていました。古き良き時代の調査報道はどこへ行ってしまったのでしょう。
<参考文献>
1.O’Connor A. “Fish oil claims not supported by research.” New York Times. March 30, 2015
2.Endres S et al. “The effect of dietary supplementation with n-3 polyunsaturated acids on synthesis of interleukin-1 and tumor necrosis factor by mononuclear cells.” New Engl J Med 320:265-271 (1989)
3.Serhan CN. “Pro-resolving lipid mediators are leads for resolution physiology.” 510:92-101 (2014)
4.De Caterina R and Renda G. “Clinical use of aspirin in ischemic heart disease: past, present and future.” Curr Pharm Des 18:5215-5223 (2012)
5.Serhan CN et al. “Resolvins, docosatrienes, and neuroprotectins, novel omega-3-derived mediators, and their endogenous aspirin-triggered epimers.” Lipids 39:1125-1132 (2004)
6.Gottlieb S. “COX 2 inhibitors may increase risk of heart attack.” BMJ 323:471 (2001)
7.Sekikawa et al. “Serum levels of marine-derived n-3 fatty acids in Icelanders, Japanese, Koreans, and Americans.” Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids 87:11-16 (2012)
8.Yokoyama M et al. “Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomized open-label, blinded endpoint analysis.” Lancet 369:1090-1098 (2007)
9.Otto MC et al. “Circulating and dietary omega-3 and omega-6 polyunsaturated fatty acids and the incidence of CVD in the multi-ethnic study of atherosclerosis.” J Am Heart Assoc 2:e000506 (2013)
10.Harris WS et al. “Erythrocyte omega-3 fatty acids increase and linoleic acid decreases with age: observations from 160,000 patients.” Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids 88:257-63 (2013)
11.Yee LD et al. “Omega-3 fatty acid supplements in women at high risk of breast cancer have dose-dependent effects on breast adipose tissue fatty acid composition.” Am J Clin Nutr 91:1185-1194 (2010)
12.Rise P et al. “Statins enhance arachidonic acid synthesis in hypercholesterolemic patients.” Nutr Metab Cardiovasc Dis 11:88-94 (2001)
13.Bergkvist C et al. “Dietary exposure to polychlorinated biphenyls and risk of myocardial infarction.” Int J Cardio 183:242-248 (2015
14.Taha AY et al. “Dietary omega-6 fatty acid lowering increases bioavailability of omega-3 polyunsaturated fatty acids in human plasma lipid pools.” Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids 90:151-157 (2014)
15.Ramsden CE et al. “Use of dietary linoleic acid for secondary prevention of coronary heart disease and death: evaluation of recovered data from the Sydney Diet Heart Study and updated meta-analysis.” BMJ 346:e8707 (2013)

  • 2015年09月11日(金)19時28分

シアーズ博士が自身の教科書を出版

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シアーズ博士は栄養学に関する人気書の著者として良く知られています。その著書は米国で600万部以上売れており、No.1ベストセラーとなった『ザ・ゾーン』、人気の料理本『ゾーン・パーフェクト・ミール』を含む3冊はニューヨークタイムズ紙ベストセラーとなりました。ですから、シアーズ博士が初の教科書『Metabolic Syndrome and Complications of Pregnancy(メタボリック症候群と妊娠合併症)』を最近出版したのもさほど驚くことではないでしょう。実際には、シアーズ博士はこの教科書の共同編集者であり、もう一人の編集者はミラノ大学医学部の女性・母親・新生児学科における学科長かつ教授であるエンリコ・フェラッツィ博士です。この本は、妊娠中いかに胎児の健康を増進するかに関する二人の長年に渡る討議の集大成です。
表紙から見てとれるように、この本は人目を引くような派手なデザインではありません。ですから、この本が皆様の街の書店に並ぶことはないでしょう (Amazon.comでは購入可能ですが)。
この本には「胎盤内インフラマソームの役割 母体肥満が胎児発達に与える悪影響に関連して」「母親の食生活、発生学的起源、心血管代謝障害リスクの世代間伝達」など、興味深い章が並んでいます。明らかに一般大衆向けの本ではありませんが、シアーズ博士は最初の章で、この本全体のテーマとなるメタボリック症候群における炎症の役割について記しています。この章はメタボリック症候群に苦しむ全ての人(すなわち肥満、糖尿病予備軍、そして糖尿病の人)に深く関連しています。というのも、皆様がこれまでメタボリック症候群について知らされてきたことのほとんどが間違いである理由がそこで説明されているからです。
これらの章の内容は医学の専門家向けですが、 妊娠から最善の結果を得ることを望む、教養ある人々にとっても重要な内容です。特にシアーズ博士が抗炎症食事法について書いた章には、胎児のためになる必要かつ実践的な食事アドバイスが含まれているからです。
来月号ではシアーズ博士の次女クリスティンが、この教科書の内容とゾーンダイエットを自身の妊娠生活でどのように実践しているかをお知らせします。クリスティンは近々、妊娠性糖尿病かどうかを診断するための糖負荷試験を受ける予定で、それに向けて万全の準備を整えているところです。

  • 2015年09月01日(火)19時26分

糖尿病治療における新発見?それとも単に ゾーンダイエットの再発見?

『Diabetes Care』(1)という糖尿病に関する医学誌の7月号に掲載された興味深い記事を読む機会がありました。この記事において興味深い点は、主要な著者の一人が、肥満と糖尿病の治療における医薬品使用を支持する第一線の研究者であることです。

この研究は「食事で炭水化物を摂る前にタンパク質を摂ることは、2型糖尿病患者の血糖値とインスリン反応に影響を与えるかどうか」という単純な問いに関するものでした。この問いに答えるには、非常に単純な実験をする必要がありました。研究者は糖尿病患者に同じ朝食を2回、別々の日に与えました。1回目は炭水化物を先に、2回目はタンパク質を先に食べるようにしました。もう一つ興味深いことに、ここで与えられた朝食はカロリーが高すぎではありますが(私がすすめるゾーンの朝食は400カロリー以下であるのに対し、この朝食は628カロリーでした)、そのカロリー比は炭水化物43%、タンパク質35%、脂質22%で、ゾーンダイエットに非常に近いものでした。

研究の結果分かったことは、タンパク質を先に、炭水化物を後に食べることで、その後二時間、糖尿病患者における血糖値の上昇とインスリンレベルの上昇はそれぞれ74%、49%抑えられるという劇的な結果でした。この記事の著者達はこの結果についてどう思ったでしょうか。彼らはこう書きました。『食べる順番が血糖値に与える影響の大きさは、医薬品が持つ効果に匹敵する。』これは、糖尿病薬業界の有力なスポークスマンの一人から発せられた非常に強力なメッセージです。

しかし、彼らがより良い結果を得る可能性はあったでしょうか。恐らく、その朝食の炭水化物を68gから40gに、タンパク質を58gから30gに、脂質を16gから13gに減らしていれば、更に良い結果が出たことでしょう。そうするとカロリーは628カロリーから397カロリーに減少していました。そしてもちろん三大栄養素の比率も、炭水化物40%、タンパク質30%、脂質30%になっていました。炭水化物とカロリーを減らすことで、血糖値とインスリンレベルの上昇抑制効果は更に大きくなっていたことでしょう。実際、それはハーバード大学医学部により1999年に実証されました。(2)

私はこの記事を読んでいる時、ただ単に炭水化物の前にタンパク質を摂るだけで糖尿病患者における血糖値をコントロールできるというこの驚くべき医学的新発見について、何かとても馴染み深いことのように感じました。この新発見がとても馴染み深いことに感じられた理由は、私が1997年に著書『Mastering the Zone』 (3) の中で、既にそのことについて書いていたからでした。それは 56 ページの「役立つヒントNo.13」に記されていました。もし『Mastering the Zone』が100万部以上売れたニューヨーク・タイムズ紙ベストセラーでなかったとしたら、炭水化物の前に適量のタンパク質を摂るというシンプルな変革がどんな薬にも匹敵する効果を持つということを、糖尿病の専門家達が理解するのに20年近くかかった理由を私は理解できたでしょう。しかし残念なことに、『Mastering the Zone』が100万部以上売れたという事実の下では、(もしその食事がゾーンバランスである場合)食べる順番が薬よりも強力な効果を持つことを認めるのにこんなにも時間がかかった理由の理解に苦しみます。皆様は、その理由はお金かも知れないと思われますか?

<参考文献>
1.Shukla AP, IIiescu RG, Thomas CE, and Aronne LJ. “Food order has a significant impact on postprandial glucose and insulin levels.” Diabetes Care 38:e98-e99 (2015)
2.Ludwig DS, Majzoub JA, Al-Zahrani A, Dallal GE, Blanco I, and Roberts SB. “High-glycemic-index foods, overeating, and obesity.” Pediatrics 103:e26 (1999)
3.Sears B. Mastering the Zone. Regan Books. New York, NY (1997)

  • 2015年08月12日(水)15時23分

ゾーンへの情熱 – ヨーロッパとメキシコにて

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数週間外国に出て、世界の人々がこの20年間ゾーンコンセプトをどのように生活に取り入れてきたかを目にすることは、私にとっていつも喜ばしいことです。
今回のヨーロッパ旅行最初の目的地はイタリアのボローニャで、ゾーンの最新情報について知りたい方々が数百人、イベントに集まっていました。先回ヨーロッパを訪れた時以降の最新情報が沢山あったので、集まった方々に話すことが山ほどありました。翌日はイタリア北東部に移動し、午前中は地元のスポーツジムでセミナーを行い、ゾーンビュッフェのランチで締めくくりました。午後は移動中にかつてジュリアス・シーザーが渡ったルビコン川を渡り、夕方はイタリア薬剤師協会向けのセミナーを行いました。日を改めてイタリア中部に戻り、非常に高級なスポーツクラブの屋内テニスコートをステージに使いながら、約300名の参加者に向けてスポーツセミナーを行いました。 もちろん、その後に待っていたゾーンビュッフェは嬉しいおまけでした。その晩にはもう一つ薬剤師協会向けにセミナーがありました。
それから、イタリア語版『地中海式ゾーン』の発売に際し、最初にイタリアの主要新聞紙 (La Stampa) のインタビューがあり、続いて全国ネットのテレビ番組に90分間以上出演しました。その番組はイタリアで大人気のニュース番組で、アメリカの60 Minutes とThe Viewを足して2で割ったようなものです。翌日ミラノに戻り、約80名の記者の前で出版記念記者会見を行い、もちろんその後には再びゾーンビュッフェが待っていました。 貧乏暇なしで私はそれからベニスに戻り、40年間に及ぶゾーンダイエット開発の歴史について語りました。
その後、急旋回してミラノに戻り、半年に1度行われるゾーンコンサルタント学会で200名程の医師達のために話をしました。その晩遅い便でスペインに飛び、翌朝も半年に1度のゾーンコンサルタント学会で別の医師達150名のために話をしました。翌日はスペイン語版『地中海式ゾーン』の発売にあたり、20名の記者を集めて最新刊について話し合い、古くからのゾーンファンでテレビにもよく出ているスペイン人シェフが用意したゾーンのコース料理を味わっていただきました。
スペインのマドリッドからメキシコのメキシコシティまで12時間のフライト中に少し休憩し、メキシコの全国ネットテレビ番組2つに出演しました。その後、年に一度の医師会でメタボリック症候群(糖尿病予備軍)治療にゾーンパスタを使用した最新の臨床試験結果を発表しました。私にとって最大の目玉は、新しいゾーントルティーヤの試食でした。メキシコにいる我々のパートナーは、アメリカ人が本物のメキシコのコーントルティーヤを再現できるはずがあろうか、まして空腹感を止めることができるトルティーヤなんて、と非常に疑っていました。その不可能な課題が2つとも達成されたことに対し、彼らは驚きのあまり言葉を失っていました。これはメキシコにおける肥満と糖尿病を改善する道かも知れません。
最後に、テレビでよく見かけるドクター・オズとその仲間達が栄養学界を牛耳るアメリカに戻りました。仕方ありません、少なくとも私は秋に再びヨーロッパとメキシコを旅するのを楽しみに待つことができます。

  • 2015年07月01日(水)18時15分

2015年ゾーンクルーズ ハイライト

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ゾーンクルーズは毎年行われており、今年も素晴らしいゾーンクルーズとなりました。
ゾーンクルーズの内容は常に進化し続けています。
その理由は、抗炎症栄養学において常に新たな発見があり、また、新たな発見を皆様それぞれの状態に役立つ実用可能なものにするための工夫を重ねているからです。

今回のクルーズにおけるゲスト講演者は、イタリアのダニエラ・モランディ女史とイギリスのニール・マクファーレン氏でした。モランディ女史はイタリアのゾーンコーチで、彼女が開発している次世代ゾーンデザートについて説明し、そのデザートは夕食で試食することができました。
マクファーレン氏は高用量・高純度のフィッシュオイル製造を可能にした、フィッシュオイル業界において欠かせない存在です。

ゲスト講演と同じ位重要だったのは、ゾーンパスタを使った食事を参加者の皆様に紹介できた事です。
参加者の方々は、その味と満腹感両方において、満足して頂き、中には既に熱烈なファンになってくださった方々がいました。

クルーズ参加者の60%はリピーターですが、彼らにとっても、ゾーン理論が如何に人生を変えるかについて更に理解を深める機会であるだけでなく、同じ目的を持つ仲間と旧交を温める機会にもなっています。
午後のプログラムに組み込まれているドロップイン・ディスカッションに参加すると、その事が良く見て取れます。このコーナーでは挙げられる質問のほぼ全てに対し回答が得られます。

私にとって大変な仕事ではありますが、これは私の最も重要な目標でもあります。つまり、ゾーンクルーズの参加者が誰一人として疑問に対する答えを得られないまま船を下りることがないように、という目標です。

今回の旅で一番魅力的な経験は、私が船を下りる時の事でした。
妻のためのプレゼントを買ったので、その関税を払うために税関に行きました。税関の主任はパスポートを見て私が誰かを認識し、すぐにその人の最新のAA/EPA比についてだけでなく、私の新刊『地中海式ゾーン』をどれほど気に入ったかを話し始めました。彼が私のファンであり、15秒間の名声を経験できたことを嬉しく思いました。
来年予定されているパナマ運河へのゾーンクルーズは、次世代ゾーンフードの調理なども含め更に素晴らしい進化をとげることでしょう。

  • 2015年05月04日(月)18時08分

マキ・フィールズ・フォーエバー

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シアーズ博士はより多くの方々に真の健康を提供するため、インディアナ・ジョーンズの冒険のようにチリのパタゴニア地方へ出かけました。

抗酸化物質を多く含み、また、遺伝子レベルでのアンチエイジングにも必要である、野生のマキベリーを栽培可能にする試みの進捗調査のために!!

パタゴニア地方に自生するマキベリーの遺伝的性質の研究に対し、チリ政府と民間企業は過去5年間に多額の資金を投入してきました。
野生のマキベリーから1500種以上のクローンを作り、その中から栽培に適した「最善中の最善」である種を選び抜き、ようやく彼らの研究結果が実を結び始めています。

収穫に適した高さに育つよう品種改良された栽培2年目のマキベリーと共に、私達の勇敢なインディアナ・ジョーンズが立っているのをご覧になれるでしょう??

シアーズ博士の笑顔からは想像し難いかもしれませんが、栽培に適した「最善中の最善」である種を選び抜くというプロジェクトは困難を極めました。

その理由は、マキベリーの樹がその性を2年ごとに変えるからです。
ご存知の方は少ないと思いますが、樹木の中には、生存のため、または子孫を残すためにオスとメスを行き来する種類があります。まだそのメカニズムは神秘のベールに包まれているものの、マキベリーも2年ごとにオスの樹がメスの樹になったり、メスの樹がオスの樹になったりするため、1本の樹が完全に成熟するのに5年かかり、それまで最終的な成果を計測することはできませんでした。
加えて、マキベリーのポリフェノール含有量を高めるために最大のストレス(強風、薄いオゾン層、夜間の低温)がかかるよう、この過酷な場所が試験栽培地として選定されました。

Polyphenols XTに使用されているポリフェノールが「最高中の最高」であるというシアーズ博士の主張の根拠は、最善中の最善のマキベリーを栽培可能にするためのこの工夫にあります。
現在進行中の臨床研究は博士の主張を確固たるものにしており、新しい研究は、マキベリーに含まれるポリフェノールがサーチュイン1遺伝子を活性化し老化プロセスを減速させるのに優れた効果を持つ事を実証しています。

  • 2015年04月12日(日)14時58分

ゾーンがサポートする選手、世界のあちこちでレースに出場

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私はようやくオーストラリアの家に腰を据え、今シーズン最後のトレーニングに入りました。レースと移動続きの素晴らしい一年もあと1レースを残すのみとなりました。
今シーズンはスペインのマヨルカ島への旅で始まりました。マヨルカ島では初のアイアンマン・レースでしたが、この島では既に長い間アイアンマンの半分の距離のトライアスロン(アイアマン70.3)が開催されてきたので、最高のレースになるだろうと確信していました。
マヨルカ島は期待を裏切りませんでした。海は穏やかで澄み切っていました。バイクコースには全ての要素が少しずつ詰まっていました。最初の部分は風の強い平坦な道で、70マイル地点からは10kmの上り坂です。マラソンコースが平坦なのは良いことですが、湿度の高さと32℃を超える気温は過酷でした。興奮と緊張、そして正直なところ少しの不安と共にレースの朝を迎えました。何しろ225kmの仕事の日ですから!
私は快適に泳ぎ、先頭の女子選手から15秒ほど遅れて陸に上がりました。自転車レースに入って間もなく、私は先頭に出ました。自転車で十分に他の選手を引き離しておく必要がある事を知っていました。トライアスロンではマラソンに入ってから本当のレースが始まることが多いからです。メインイベントであるマラソンは、ウォーミングアップである3.8kmの水泳と180kmの自転車レースのようにはいきません。


女子のレースでは熾烈な戦いが繰り広げられました。自転車の最初の5kmの間、私は先頭にいましたが、5kmを過ぎたところで追い越されました。経験上、まだレースは終わりに程遠い事を知っていました。15km地点の近くで先頭選手のペースが落ち始めました。先頭選手をエスコートする自転車の旗が段々と近くなるのを目にしました。そこで先頭選手を一気に追い抜き、彼女が私に追いつくのは無理だと感じさせました。レースは単なる競争ではなく、最終的には知力の戦いでもあります。
良い知らせは再び先頭に立った事で、悪い知らせはそれが長く続かなかった事でした。今朝スタートの合図を聞いた瞬間から私が意識していた足の速い選手が、約25kmの地点で私を追い越して行きました。彼女は私がすぐ後ろを追い続けていたのを不快に感じ、ペースを上げました。そのペースに私はついていけませんでした。
それでも、私は2位でゴールインしました。順位の上では優勝ではありませんが、ケガと不運に苦しめられた3年間の後の2位は、優勝と言っても良いほどでした。
しかし喜んでいる時間はほとんどありませんでした。というのも、4週間後には台湾のアイアンマン70.3で再びスタートラインを踏んでいたからです。アイアンマン70.3はアイアンマン・レースの半分の距離ですが、ずっと速いペースが要求されるので、私はよく、「距離は半分、苦しみは2倍!」と言っています。
台湾での文化的経験はレースの経験と同様に素晴らしいものでした。レースの前に少し観光する時間がありましたが、レースが数日後に迫っている状況では、レースが頭を離れることはありませんでした。
競技場は小さかったですが、このレースで3回優勝経験のある選手が出場していました。激しいレースになるだろうと予測していました。私は自分の得意な水泳と自転車に頼る必要があり、自転車が終わった時点で2位の選手との間に11分の差をつけていました。32℃を超える気温と高い湿度の中でこの差はとてもありがたく、後は無理にペースを上げず力強く走るだけで良いと知っていました。マラソンの間に2位との差は3分縮まりましたが、水泳と自転車で稼いだ差が十分であった事が証明され、ほぼ10年になるプロ生活で初めて、アイアンマン70.3で1位を勝ち取ることができました。
夢を追いかけるのに遅すぎることは決してありません!

Dede Griesbauer

  • 2015年01月13日(火)19時21分

KEIRINグランプリ2014 前夜祭

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ドクターシアーズ・ゾーンでは
女子競輪の協賛をしております。

2012年より女性の自転車競技選手の育成目的として
結成されたガールズ競輪を通して
一人でも多くの女性が
また、日本の選手が輝けるようにと
お手伝いをさせていただいております

今日はグランプリ前夜祭ということで
参加してまいりました

お写真は前夜祭の様子と
ほとんど1着という記録をだしている
小林優香選手の素敵な笑顔を皆様にも

皆様のますますのご活躍を応援させて頂いております

  • 2014年12月18日(木)17時33分
Web Diary